海外現地レポート!台湾でのベジタリアン生活

海外現地レポート!台湾でのベジタリアン生活

2024-7-29
海外のフードダイバーシティ事情をご紹介する海外現地レポート!第1弾のフィンランドのグルテンフリー生活に引き続きまして、第2弾は台湾のベジタリアン生活についてご紹介します。

台湾と言えば、漠然と食事が美味しいというイメージを持たれている方が多いと思いますが、実はベジタリアンの割合が世界的に見ても高いということは意外と知られていないのではないでしょうか?

今回は台湾におけるベジタリアン生活について、十年以上台湾で生活されているちあきさんにレポートして頂きました。

 

こんにちは!ちあきです。台湾に来て十何年、以前は台中で生活していましたが、結婚を機にここ数年は台北で生活しています。私自身はベジタリアンではないのですが、普段台湾で見かけるベジタリアンな場所と、ベジタリアンなお友達について紹介していきたいと思います。

 

はじめに

台湾でご飯を食べる際には、「葷(フン)」か「素(スー)」かを確認されることが多いです。「葷(フン)」と言った場合には、通常肉、刺激、においのある野菜(ニンニクなど)を含む食事(つまり普通の食事)が提供されます。「素(スー)」と言った場合は更に、「全素(チェンスー)」か「蛋奶素(ダンナイスー)かと聞かれます。 全素(チェンスー)とは卵、乳製品を食べないベジタリアン、つまりビーガンに近い意味合いを指し、蛋奶素(ダンナイスー)とは卵、乳製品は食べられるベジタリアンを指します。

2023年の最新統計によると台湾の人口のおよそ14%がベジタリアンだそうです。以前、「牛肉」関連商品の輸入販売について会社で会議した際、台湾のベジタリアン人口の多さが商品売り上げの不安要素の一つだと話題に上がりました。台湾は名物の“牛肉麺(にゅうろうめん)”のように、肉料理も人気がありますが、一定数肉を食べない人たちがいて、ローカルな食堂から、高級レストランまでベジタリアンメニューを必ず見かけます。お弁当の注文、会社の忘年会など、団体で食事をオーダーする場合はかならずベジタリアンの人数確認があり、ベジタリアンの人専門のテーブルが設けられます。日本とくらべると、ベジタリアンの存在の大きさを感じます。

では、ここから具体的にベジタリアンな台湾の風景について紹介していきます。

 

ベジタリアンフードスタンド

家から徒歩10分にあるベジタリアン向けのフードスタンド(主にテイクアウト、テーブルを道に出したらイートインも可能)に仕事帰りに寄ってみました。

ここには、私の大好きな“芋頭(タロイモ)”メニューがたくさんあります。今回はあまり食べた経験のない“ヤマブシタケのごま油スープ”を注文し、お店の方が調理してる間に会話も楽しみました。

私 「このお店は餃子もありますけど、お肉は使用していないんですよね?」
店員 「はい、うちの餃子は全部野菜を包んでますよ!」
私 「植物肉などは使用してないんですか?」
店員 「うちの店のメニューは100%植物肉を使用していません!美味しくないからね。」
私 「美味しくないんですか?」
店員 「はい、健康の事を考えてより自然な野菜を取った方がいいでしょ?だから、うちのメニューには使用していません。」

この日は空いていたので、10分ぐらいでスープが出来上がり、自宅に持ち帰って夕食としていただきました。スープの具のボリュームが多くてびっくり!ごま油、キャベツ、ヤマブシタケ、クコの実、シイタケ、その他、漢方薬系の具材がたくさん入っていました。台湾で安いお弁当(ごはん、肉(もしくは魚)、副菜でお腹いっぱいになる)なら今は、90台湾元~120台湾元程度(1台湾元 = 4.67円、2024/7/29時点)で買えるので、130元でスープのみは高めに感じましたが、女性なら十分お腹いっぱいになれる量でした。

麻油猴頭菇湯 (ごま油ヤマブシタケスープ)130台湾元

 

スーパーマーケット

近所に、“全聯福利中心(PX Mart)”というスーパーマーケットがあります。店内をよく見て歩いてみるとベジタリアン商品が多く、何を紹介すれば良いか迷います。

インスタントラーメン

まずはインスタントラーメンコーナーから紹介したいと思います。驚く事に、棚の上から下までベジタリアンインスタントラーメン(袋、カップ)が並んでいました。味のバリエーションもかなり豊富です。簡単に説明すると、野菜味、豚の骨付きあばら肉味、煮込み牛肉味、魚のつみれ味、バクテー味、漢方薬スープ味、スパイシー豆腐と新豚肉味、タイ・トムヤムクン味などです。ちなみにパッケージに“新豚肉”という見慣れない表示がありましたが、豆、キノコで製造された植物肉を指しているそうです。

その中でも私個人のお気に入りは隨緣(スイユエン)ブランドの“韓国風キムチ”味。以前、夜食としてこのカップ麺を台湾人同僚たちとよく食べていました。

この日は気分を変えて、“隨緣(スイユエン)”のトムヤムクン味に初挑戦してみる事にしました。カップ麺だと一杯およそ30台湾元で値段も普通のカップ麺と差を感じません。味は酸っぱさ、トウガラシの辛さなど、濃いトムヤンクンスープ独自の風味が再現されていました。

この写真に写ってるすべての商品がベジタリアン向けです。

 

2つとも全素のインスタントラーメンです。右が今回食べた隨緣(スイユエン)のトムヤムクン味です。

 

ベジタリアン鍋 スープの素

台湾では季節を問わず鍋を食べます。“鍋のスープの素“はレジ近くに置いてありました。昆布だしなどの日本の味、四川風激辛スープ味等があり、ベジタリアン鍋のスープの素もあります。トウキビ、トマト、へちま、ブロッコリーなど日本とは少し異なる、台湾でおなじみの鍋野菜がパッケージに載っています。

ベジタリアン鍋のスープの素。ベジタリアンきのこ鍋と養生鍋がそれぞれ2種類ありました。

 

ベジタリアン ビーフジャーキー

台湾人がこよなく愛する肉乾(ビーフジャーキー)売り場にもベジタリアン向け商品を発見しました。クラシックなパッケージの「香菇 肉乾 (キノコビーフジャーキー)」はオリジナル味とスパイシー味の2種類あり、モダンなパッケージの「植物VEGAN JERKY肉乾」はタイレモン、フレンチトリュフ、台湾風サーチャージャン(サテソース)、四川風トウガラシ味の4種類ありました。今までほとんど食べたことが無かったので購入してみて、友人たちと週末一緒に食べてみました。

「香菇 肉乾 (キノコビーフジャーキー)」は、名前、食感からもキノコ由来がはっきりとわかるビーフジャーキーでした(つまり肉を食べている感じでは無い)。

 

それに比べて植物VEGAN JERKY肉乾は、植物由来の肉とは気づかないほど本物の肉の食感、味でした(個人差あり)。価格帯は100gで70~75台湾元でした。

右からの2つがベジタリアン(サテソース味、四川風トウガラシ味、)向けのジャーキー。1番左は本物のビーフジャーキーですが、ベジタリアン向けより少し高額でした。

 

ベジタリアン食堂

今年の4月初旬に清明節(お墓参りの風習)の連休を利用して台南に遊びに行ってきました。台南滞在中にベジタリアン食堂(台湾によくあるビュッフェスタイル)があったので行ってみました。

清明節(お墓参りの風習)の連休でも営業していた台南の食堂「仁川素食」

 

メニューには“魚”、“羊の肉”という表示もあります。一体何でできている肉なのか知りたくなり、従業員の方にお話を聞いてみました。

私 「魚、ベジタリアン羊の肉と表示がありますが、何でできてるんですか?」
店員 「主にキノコ類から作られています。 当店のものは、この“龍鬚菜(ロンシュウツアイ)”のマヨネーズ和えとベジタリアン魚メニュー以外は全素(チェンスー)です(マヨネーズ和えとベジタリアン魚にはおそらく卵が使用されているので蛋奶素(ダンナイスー))。」
私 「植物肉を使用してるんでしょうか?」
店員 「はい、でも出来る限り使用しないように心がけています。最近の素食レストランは以前よりも大量に植物肉を使用するようになりました。でも、体に良いわけではないので当店では極力使用せず、自然な食材を主に使って行きたいと考えています。」
私 「お客さんはどんな方が多いですか?女性が多いとか?」
店員 「男女の比率は半々ぐらいです、特に差を感じません。旧暦の1日と15日は特にお客さんが多いです。就いている職業によって、旧暦のこの2日間に素食を食べる習慣があります。見て下さい、このカレンダーに旧暦の1日と15日に丸印をつけているでしょう!いつもこの日は売り上げが2倍以上になります!」
私 「それはどんな職業の方ですか?」
店員 「屠殺に関する仕事、間接的に殺生に関わる仕事です。例えば、肉を販売してる会社、レストランのオーナーや従業員、アルバイトの人達もこれに含まれます。」
私 「それは仏教と関係していますか?」
店員 「仏教徒だけじゃなくて、道教も台湾では関係しています。そういう方たちの中には365日全素(チェンスー)の方もいますが、そうじゃないベジタリアンもたくさんいます!」

 

朝ごはん屋さん

ここは台南に行くと、いつも行く昔ながらの朝ごはん屋さん「老古石碗粿」です。台湾のローカルフード、お米で作った茶碗蒸しのような料理、碗粿(ワーグイ)を提供しています。ここでもベジタリアン(素食)のメニューがありました。今回伺った時は人気(?)のせいか売り切れだったので次回チャンスがあれば試してみたいです。こういった昔ながらのお店にはベジタリアン(素食)のメニューがだいたいある印象です。

素食碗粿(ベジタリアン ワーグイ)のメニューがあります。

 

ベジタリアン弁当

続いては、みんな大好き“ベンタン”(お弁当)です。南部を旅行した帰りに立ち寄った嘉義(ジャーイー)の美術館の中にある売店のベジタリアン弁当を紹介します。そこでは、ローズマリーチキン弁当、スモークチキンサラダ弁当、そしてベジタリアン弁当の3種類の弁当が販売されていました。今回は、普段購入しないベジタリアン弁当に挑戦してみました。ベジタリアン弁当の中身は、主食がヤマブシタケのハーブソース、味付け卵(うす味)、サツマイモ、ゆでブロッコリーと焼きミニトマト、そしてごはん。139元で値段も高すぎず(安くもない)、味も見た目もオシャレで想像以上の美味しさでした。大きなヤマブシタケのハーブソースがけは、鶏肉に負けない歯ごたえとボリューム。味、量と共にオシャレな見た目に感動のベジタリアン弁当でした。

 

コンビニ

台湾と言えば「コンビニ」です。日本もコンビニは多いですが、台湾はどんな高い山や離島に行ってもコンビニがあります。コンビニは台湾人の生活に欠かせません。最近、近所のセブンイレブンでベジタリアン向け商品の売り場を発見しました。カップ麵コーナーを見てみたら、棚の一列がベジタリアンカップ麵で占拠されていました。コンビニでもベジタリアン向け商品の売り場面積がきちんと確保されていて絶対的に無視できない存在であることがわかります。

おにぎりや冷やし麺、お弁当売り場にもベジタリアン商品コーナーがあり温野菜のお惣菜パックが販売されています。台湾の人は生野菜をあまり食べないのでサラダより人気がありそうです。

セブンイレブンにベジタリアン商品専門の「VEG.World」というコーナーが設けられています。

 

ベジタリアンレストランの食べ放題

先日、夫の誕生日祝いにベジタリアンレストランの食べ放題クーポンを二人分頂いたので、初めてベジタリアンレストランの食べ放題(午後のお茶タイム)に行ってきました。

日曜の午後という事もあり、ほぼ満席状態。ここは、ランチ、午後のお茶、夕食の3つの時間帯で食べ放題があり、さらに結婚式披露宴もできる(実際、私が食べていた隣で披露宴が行われていました!)という日本では経験した事のない種類のレストランでした。

印象深かったのは、「日本式ちらし寿司」というメニューで、遠くから見ると刺身に見える、そしてほんのりお魚の味がするゼリーがのっているちらし寿司がありました。わさび醬油で頂くと、確かにちらし寿司を食べているような錯覚に陥ります。

ピザや、パスタ、ケーキにアイスなど、洋食メニューも豊富で、街中でよく見る一般のベジタリアン、ビュッフェスタイル食堂との違いを感じました。そして、中華風、台湾風なメニューだと、やはり数種類のキノコがふんだんに使用されています。私自身は、以前台中の職場の食堂でよく食べていた発酵パイナップルと白苦瓜スープを久しぶりに味わえた事が嬉しかったです。この発酵パイナップルは大豆と塩などをパイナップルに漬け込んで発酵させた瓶詰め、全素(チェンスー)食品です。苦すぎない白苦瓜と発酵パイナップルのほんのり甘くてしょっぱい風味が特徴の私の大好きなスープですが、実はベジタリアンスープでした。

発酵パイナップルと白苦瓜スープ(手前)

 

中華風、和風、洋風のメニュー、さらにデザートメニューもたっぷり楽しみ大満足なベジタリアン2時間食べ放題でした。お客さんは、中高年層からお子様連れの家族、カップル、男性も女性もたくさんいて、雰囲気は台湾の普通の食べ放題レストランと同じようでした。

 

ベジタリアンのお友達ジェシーさん

夫の職場にジェシーさんというベジタリアンの方がいます。以前、夫がジェシーさんから頂いたベジタリアンピザを家に持って帰ってきました。この時、あまり味に期待していなかったのですが、ものすごく美味しくてとても驚きました。このピザ屋さんは、もともとは普通のピザ屋だったそうですが、ご両親が健康上の理由でベジタリアンの食生活をされているらしく、そんなご両親に安心して美味しいピザを食べさせてあげたいという思いからベジタリアンピザを始めたそうです。

ベジタリアンフードは安全で地球環境に優しくそして、何よりも食べ物の品質がよく、とても美味しいとジェシーさんは熱く語ってくれます。さらにベジタリアンフードは肉が入った食品と比べて、腐りにくいらしいとの事。年中湿気が高い台湾の気候に“腐りにくい‘’事は大きなポイントです。

手作りベジタリアンハンバーガー。台湾のパイナップルも挟まれています。友人たちの集まりや、小さなイベントを企画する際、彼女のベジタリアンメニューはいつも参加者に大好評だそうです。

 

ジェシーさんに里仁(Leezen)という自然有機食品を多様に扱っているお店をオススメされたので、仕事帰りに行ってみました。お店の中は、ほぼすべての商品にに“純素Vegan”, 奶素Lacto-vegetarian, 蛋奶素Lacto-ovo vegetarian の表示があり、ベジタリアンの方には安心して買い物ができる感じを受けました。様々なベジタリアン商品の中で、気になったのは6月の端午の節句で台湾中で食される粽(ちまき)です。「8種類の“純素Vegan”ちまき」が売られていました。豊富なバリエーションで、「美味しいものを選んで食べたい」台湾らしいこだわりを感じられました。

8種類の“純素Vegan”ちまき
左上から「ココナッツ風味の紫米タロ芋ちまき」、「抹茶小豆アイスちまき」、「小豆あんの塩ちまき」、「オリジナルちまき」、「クラシック北方ちまき」、「シイタケと栗のちまき)」、「香るもち米と鶏肉ちまき」 「タイ風バジル豚肉炒めちまき」と台湾、香港、日本、東南アジア系が入り混じるメニューから、多彩な食文化を愛する台湾らしさが感じられます。

 

さいごに 

台湾では、ベジタリアンに対して肯定的で好意的な雰囲気があります。「日本の人に台湾のベジタリアン文化を紹介します」と周囲に話したところ、たくさんのノンベジタリアンの方からも応援をいただきました。台湾で生活を始めて十年以上になりますが、ベジタリアン情報がこれほど豊かで身近であることに改めて気付かされました。

ある台湾人の友人Eさんが、以前こんなエピソードを話してくれました。彼女と旦那さんはノンベジタリアンですが、カップル時代にはよく美味しいベジタリアンレストランにデートに行っていたそうです。その理由は、旦那さんに多くのベジタリアンの友人がいて、彼らから洗練されたレストラン情報をいつも教えてもらえるからだそうです。Eさんが嬉しそうにその話をしてくれる姿から、ベジタリアンレストランでのデートに対してポジティブな印象を抱いていることがわかります。素敵なベジタリアンレストランに連れて行ってくれることが、一種の魅力になっているようです。また、新たな台湾の面白さを発見した気がしました。

台湾では、ベジタリアンの食文化が日常の一部です。日本ではあまり馴染みのなかったベジタリアンの世界も、台湾では伝統的かつ現代的で、気軽に日常生活に溶け込んでいます。私自身、最近になって「台湾はベジタリアン先進国だ」と気づきました。日本から台湾に来ると、街中で「素食」の看板を簡単に見つけることができます。皆さんにも、ぜひこの深い台湾のベジタリアン・カルチャーを体験してほしいと思います!

 

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